シェアする

実践編

実践編


敷金返還請求書

一般的な、敷金を返還しない大家に対する、返還請求通知書の文例です。
 通知する相手方や管理会社が不動産業者の場合、ある程度は、当該事案について対抗するだけの一般的な法的知識があることも大半ですし、やはり、利益を追求して支出を回避するのが「企業」の宿命ですから、ありきたりの定形の雛形や、道徳に訴える程度の書面で、容易に相手が応じることは期待できません。
最低限、きちんとした理論武装をした文書で、相手方に、応じざるを得ないと思わせることを心掛けた内容にした方が良いかと思います。




敷金返還請求通知書

平成●年●月●日


被通知人
 東京都●●区●● ○○ビル○階
 ●●●● 殿
通知人
 東京都●●区●●
 甲野 太郎


 私は、貴殿から平成●●年●月●●日より、貴殿が所有している下記建物を借り受け、居住しておりました。
所  在:
建物名 :
部屋番号:

 そして事前に退去予告の連絡を行い、平成○○年○月○○日に立会いの上で物件を貴殿に明け渡し、○○月○○日付の解約となりました。

 賃貸借契約の締結時に敷金として金○○,○○○円を預託しており、○○月分の賃料も全額前払いを済ませておりますが、すでに建物明け渡し後相当な期間が経過しているにもかかわらず、貴殿からは、未だに同敷金の返還をして頂けておりません。
 なお、私は、賃借期間中、細心の注意をはらって生活してきたものであり、賃料の滞納もなく、同物件に関して経年変化以外に、通常の使用を超えるような消耗はありませんでした。

 当然ご承知のこととは思いますが、民法606条1項においては、賃貸人は賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負うと定められ、最高裁判所平成17年12月16日により、通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗などの必要経費分は、通常、賃料の中に含まれていると解されております。
 また、清掃費用や補修費用についても、消費者契約法第9条1項1号において、消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、平均的な損害の額を超えるものは、その超える部分について無効であることされ、同法10条においても、民法の基本原則に関して、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重するなど消費者の利益を一方的に害するものは無効とされております。
  さらに、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」により、入居期間にかかわらず、畳床、クロス、カーペット、クッションフロア等については6年、その他の建具については8年で減価償却となり、資産評価が1円とされるため、同省令を参考としている国交省の「ガイドライン」の定める賃借人の負うべき責任についても、この範囲内に限られます。
 現に、賃借人の責任の有無や居住年月日の長短にも関係なく、解約時には当然に修繕費用を敷金から差し引く旨の、原状回復の特約は無効であるという裁判例も数多くあります。
 よって、国土交通省が定める「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の例示する以下の趣旨に反した費用について、敷金から控除することは、これをすべて拒否致します。
①次の入居者募集や確保の為に行うもの
②物件の管理上の必要から生じるもの
③自然損耗や通常の使用により生じるもの。

また、仮に賃借人の故意または過失によって生じた損害であっても、畳床、カーペット、クッションフロア、クロスなどは経過年数6年で減価償却されて1円の評価となりますので、賃借人の負うべき責任範囲は、新品購入した時点から6年を経過した時点で1円になる範囲に限られます。

 なお、本書面到着後10日以内に敷金が返還されない場合、および、今後も私への請求行為がなされた場合には、残念ながら、宅建協会や国民生活センター、消費者センター等の関係機関への申告や、別途、弁護士に一任の上、敷金返還請求の訴訟提起その他の法的手続など、然るべき対応をとる所存ですので、ご承知おき下さい。
 以上、よろしくお願い申し上げます。

草々